


3月某日午前5時、市場着。バイヤー・住本の一日は、いつもと同じように始まった。今日の仕入れの目星は入荷情報を元にすでについている。が、実際にその目で見てみないことには始まらない。馴染みの卸店を巡り、一つ一つ品を確かめ、値段交渉を始める。カキ300本、スルメイカ240杯、明日の99(キューキュー)特売用のサバを50ケース…。当然のことながら住本の頭の中では、この時点で店売りの価格は決まっている。空が明るくなり始めた6時過ぎ、彼の担当する松富本店と城北店の本日の仕入れは完了した。
16歳で魚屋に入り、市場通いはその頃から。19歳でもちづきに入社した。そんな根っからの魚屋・住本にはこだわり続けていることがある。毎年達成している『サンマ記録』。どこのスーパーよりも先に、一番最初にもちづきが100円の値をつけてサンマを売ることだ。昨年の秋も全店分のサンマを仕入れるために用意周到、買占めを図り、見事その日を迎えた。
「仕入れはとにかくおもしろい。値段もモノも毎日違う。ただ安ければいいというものではない。相場とお客様のニーズと合ってはじめて商品としての価値が生まれる。売れるも売れないも仕入れ次第、自分で買うその醍醐味、責任。それが楽しい」。ここにもバカ正直に仕事と向き合う男がいた。
